学研CAIスクール 鳥取湖山校 の日記
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中学生教科書改定による問題点
2011.10.29
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さて、前回までは中学校の教科書改訂について、
各教科ごとのポイントを順にお話ししてきました。
そのキーワードは、小学校教科書の改訂と同様に「脱ゆとり」。
教科によって濃淡はあれ、ページ数が増えること、
内容が難しくなること、PISA型学力に代表される学力観を
より反映した内容になることの3点に整理できるように思います。
ところで、質・量ともにボリュームアップする新しい教科書ですが、
はたしてすべて授業で扱うことができるのでしょうか?
この疑問をベースに、今回からは、各教科に共通する
「新しい教科書の使われ方」について考えてみます。
まずお伝えしておかなければならないのは、
「学校の授業では、教科書すべてを学習するとは限らない」
ということです。
「教科書の中で習わないページがあるかもしれない」というと、
不安に感じられる方もいらっしゃるでしょう……
これは、今回の指導要領の改訂にあたって、文科省が
教科書づくりのルールを変更したことに深く関わっています。
これまでは学習項目ごとに「上限規定」、つまり
「これを超える内容は教えなくてよい」というのが
文科省のルールでした。
しかし、今回からは「下限規定」、つまり
「この内容までは教えなければならない」と
ルールが大きく変更されました。
そのため、最低限扱わなければならない「下限規定」を
クリアしていれば、その先どこまで扱うかは教科書出版社に
委ねられるようになったのです。
たとえば、英語の「上限規定」の1つに
「受け身のうち現在形及び過去形を扱う」という
規定がありました。
しかし、新指導要領では、ただ「受け身」とされていますので、
ある出版社の教科書には
<A fireworks festival will be held tonight.>
のような未来形の文が載っています。
このように、現行教科書では「上限規定」で歯止めがかかっていて
扱われなかった発展的内容も、新しい教科書では指導要領の
範囲を超えて盛り込まれるようになりました。
ここで押さえておかなければならない大切なことがあります。
それは、最低限として習得しなければならない内容は、
どの出版社の教科書にも載っていますが、それを超える
発展的内容についてはどんな内容をどのレベルまで載せるかは
出版社によって異なるということです。
学校では、このように上限を定めていない教科書で授業が
行われるようになります。
授業でどこまで教えるかは、その教科書で扱っている内容や
教師の判断などによって変わってくることになります。
最初に「学校の授業では、教科書すべてを学習するとは
限らない」とやや刺激的なことを述べたのは、このような
事情によります。
杞憂ならよいのですが、使用する教科書によって、
学力差が生じる可能性があるかもしれません。